Vol.7　受験はスポーツではない（2017年2月）

数年前のちょうど今頃の時期に「この学校を受験しなければ後悔する」と言っていた受験生を、私が何とか志願先を調整するよう説得を繰り返していたことがありました。合格率判定が40%未満の高校を受けようとしていたからです。大学受験や就職試験なら、たとえ合格率が低くても、いくつも受験していくことは当然です。しかし、高校受験はその制度上、１度しか受けられないため、最終的には自分の実力相応の学校に予め調整をして出願するものなのです。

なので、お母様も本人に志願先を変えるよう何度も訴えていましたが、本人が頑なに変えようとしなかったため、やがては本人の意向に沿って受験することになり、「たとえ不合格でも受験できれば悔いはない」と言って出願を決めました。

何とか合格できるよう、私をはじめ講師一同、残り僅かな期間も精一杯指導させていただきましたが、果せるかな、結果は残念ながら不合格でした。私は今でもその時の本人の顔を忘れることができません。悔いを残していないと言うにはほど遠い、見るに堪えない表情でした。

私はこれまで凡そ1,000人程の受験生を輩出しましたが、このパターンで後悔していないお子様の姿など見たことがありません。逆に、志願先を調整して合格したお子様が、調整したことを後悔した例も見たことがありません。受験の戦いは、スポーツの戦いとは全く違います。友達に戦いで負けたからと言って、「強い相手と戦えて本望だった」などと心から他人を称えることなど、受験戦争には存在しません。私がこれまで合格発表現場で見てきた姿は、頭が真っ白になって、泣きながら携帯電話で保護者に報告しているというのが一般的な姿です。

今年度の受験生には、志願変更をすべきお子様は１人もいらっしゃらないことは幸いです。しかし、当日は何が起こるか分かりませんので、くれぐれも油断なく、残り僅かな期間も合格に向けて邁進していただきたく思っています。

宮川創一